ドリパ短編003「AI編」

dai-ki2006-06-06

アイ ・・・ 25歳。フリーター。ロング。






8月。
東京。
スクランブル。
人ごみの中を私は歩いている。
はげたオッサン。頭の悪そうな高校生。地味な女。
いろんな人間がいる。
私はその中の1人。
キャップ。
タンクトップ。
暑いので腰に上着の袖を使ってしばり。
ダメージジーンズ。
スニーカー。
まぁ、普通の格好じゃない?
フラフラと流れにのまれ、駅へと向かう。




ホームにつき、どうでもいい駅への切符をもって電車を待つ。
疲れた。
生きるのに疲れた。
ていうか
ていうか、めんどくさい。
人間関係に疲れた。
でも死にたくない。
死ぬのもめんどくさい。
もうすぐ電車が来る。
あと5分?




気づいたら。
気づいたら、線路の上に立っていた。
あぁ、そうか。
これでやっと苦しみから解放されるのかな。
にしても
ホームにいる人数は私を抜かして3,4人くらいなんだけど
誰一人助けに来ない。
気づいているけど、気づかないふりとか・・・。
まぁ、最初っからわかっていることだけれど。
人間なんてそんなものだと。
だけど悲観するこの気持ちはなんだろう。
私はまだ何か誰かに求めているのだろうか。
あと2分。
怖い。
急に死が怖くなった。
死んでしまったらどうなるんだろう?
葬式とかはどうでもいいのだけれど、
私の意識や記憶はどうなるんだろう。
体が動かない。
いや、動けない。
あと1分。
死ぬのは・・・嫌だ・・・誰か、




「なにをしているんだ!!」
えっ、と振り返ると1人のスーツを着た男がこちらに駆け寄る。
20代中盤くらいだろうか。
もしかしたら、同い年かもしれない。
さっきまでホームにいなかったやつだ。
私のこの状態を見かけて助けに来てくれたんだろうか。
「よし、もう大丈夫だ」
私を軽々と持ち上げ、上に置く。
本人もすぐに上に上がる。
電車が来た。
このまま、このヒトが来なかったら私は
やっぱり死んでいたのかな。
「じゃあな、気をつけろよ」
私を助けてくれた男が立ち去ろうとする。
待って!・・・なぜ私は引き止めたのだろう・・・。
「なんだ?」
お礼をさせてください。・・・自分の真面目な性格を呪う・・・。
「時間ないから、気持ちだけ受け取るよ」
そういって、男は去った。
私もその場を後にした。




8月。
東京。
スクランブル。
人ごみの中を私は歩いている。
はげたオッサン。頭の悪そうな高校生。地味な女。
いろんな人間がいる。
私はその中の1人。
そして、私を助けてくれた人も・・・。