ドリパ短編#019「三重苦の少女」

生まれつき今の体だったら、
私はそれが普通であると思っていたのだろう。
小学生に上がる頃には『今の体』になっていた。
声や音を失っても、目で世界を見られる事が唯一の救いだった。
そして、その救いも失った・・・。




徐々に視界がぼやけてきた・・・と思ったが時すでに遅し。
私の目の前にはただ黒。黒。黒。
黒の世界に私一人だけになってしまった・・・。
涙が止まらなかった。
喋られたら大声でわめいたのだろうけど私は喋られない。
喋られたとしてもその声を私の耳は聴くことができない。
目は見えない。
見えないけれど、涙を流すことはできた。




『こんなに辛いのに、どうして生きているのだろう』
暗い部屋で一人うずくまる。
私は私の現実に絶望し、ただただ死にたかった。
私が生きているのは両親のせい・・・いや、おかげだ。
こんな私でもひたすらに守ってくれる。生かしてくれる。
そんな両親の行為と好意に裏切ることはできない。
でも、それでも、私は死にたいと思っていた。
小学校に一度も行かずに中学生となった今現在。
年を重ねるごとに申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた。




最近、夢をよく見る。
夢の世界では私は世界をみられる。
          声に出してしゃべられる。
                   耳がきこえる。
ずっとこの世界にいたかった・・・。
夢の世界が私の生きていると実感できる居場所。
『夢の世界が現実なんだ』
そんな馬鹿な事を思っていた。
思っていた・・・。


彼女達が来るまでは・・・。